数学研究が行き詰り苦しくなったら『ゼロから無限へ-数論の世界を訪ねて-』を読もう
数学者の数奇な人生を彩る(?)精神錯乱状態。
根を詰めて考えを巡らす数学者のお仕事は、精神状態の破たんリスクが潜んでいます。
苦悩する数学科の大学生、大学院生
理系の中でも理学部数学科は何というか特殊な位置づけにあって、個性的な天才が集う異空間を勝手にイメージするのですが。
自己イメージに付随したイマジナルな天才性が打ち砕かれ、苦悩する人も多数おられるとか。
でも、そんな時にはこの本を思い出して欲しいのです。
ゼロから無限へ
講談社ブルーバックスから出版された『ゼロから無限へ』。初版が1971年、手元にあるのは2007年発行分。
いわゆる古典的名著です。
いや、失礼。古典的迷著でした。失敬失敬。
面白いんだ、これが。
天才たちの苦悩
数学者ガウス(1774-1855)が天才であったことを認めない人はいないでしょう。ただ、フェルマーの最終定理に挑戦し敗れ去ります(証明は1995年)。
誰も証明することも反証を挙げることもできない定理ならば、自分もたくさん提出することができる(上掲書109ページ)
実際のところ、フェルマーの最終定理にガウスが手を付けなかったのか、手を付けたけれどもどうにもならなかったのか判然としませんが、どうも後者のような気がしてならない。
負け惜しみやん。
また著者のコンスタンス・レイド氏はこう述べます。
現代数学の立場からいえば、この定理の証明はもはやあまり重要な問題ではない。この定理の攻撃の途中で、現代数学の研究に非常に役立つ概念や結果が得られたのだから、フェルマーの大定理の役割はもう済んだといってもよいであろう。
ま、負け惜しみやん!
苦悩する数学科所属の皆様、負け惜しみも重要です。
証明されない定理を前にした精神のアンバランスを改善する最も大きなチカラは、自己弁護能力です。負け惜しみを述べる力です。
鍛えておいて損はない。
大きなミス
ちなみに、この『ゼロから無限へ』にはいくつかのミスがありまして。
43ページで100までの素数をあげるのですが…
2, 3, 5, 7, (中略), 19, 21, 23, 29, 31, 34, 37, (後略)
21 = 3 × 7
34 = 2 × 17
21を挙げちゃうのは最悪しゃーない(しゃーなくない)。
だが34、お前はダメだ。
素数を数えるのに、2より大きい偶数を挙げちゃダメ、ぜったい。
数学疲れが抜けない方はこんな緩い数学を扱った一般書籍を読みつつ、英気を養えばいいんじゃないかっておもいます。オヌヌメ。
- 作者: John Derbyshire,松浦俊輔,ジョン・ダービーシャー
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2004/08/26
- メディア: 単行本
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