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英国保健省は腰痛治療ガイドラインから「鍼灸推奨」を削除できるが、日本の厚労省にはできない非科学的理由

せんねん灸 オフレギュラーきゅう 伊吹 380点 2個セット

 

日本では「柔道整復師」とともに「あん摩・マーッサージ・指圧師」、「はり師(鍼師)」、「きゅう師(灸師)」がそれぞれ国家資格として認められ、また健康保険の適用機関として開業することも可能です。

 

目が見えずとも(あるいは見えない方が)触感により手技を加減できるため盲人の就業先として想定されるなど、社会保障的観点から認められた国家資格制度であるという歴史的背景もあるようですが、科学的根拠に基づく医療の概念が広く知れ渡った現在、その存立は意外なところから揺さぶりをかけられています。

 

「ハリやお灸って、ほんまに効きまんのん?」

 

イギリスでの鍼灸事情

こんな話題が出ていました。

 

「腰痛治療においてAcupuncture(鍼)がプラシーボ(偽鍼)より優れているとは言えない、との報告」

 

www.iflscience.com

 

ちなみに、2015年現在のイギリスでの鍼灸事情は以下で詳しく述べられています(日本語)。

 

イギリスにおける鍼灸事情(鈴鹿医療科学大学保健衛生学部 鍼灸学科)

http://www.suzuka-u.ac.jp/information/bulletin/pdf/2015/5.pdf

 

英国の保健省(NHS、日本で言うところの厚生労働省)は、2011年に鍼灸師の国家資格化を見送ったとのことで、現在でも国家資格とは認められていません。

 

しかしながら、慢性腰痛のように日本でも鍼灸治療が活躍する(効くとは言わない)分野ではNHSがガイドライン中で利用を推奨していたようです。

 

www.theguardian.com

 

この記事が2009年。

 

7年後の2016年、方針は転換されます。

 

Exercise not acupuncture for people with low back pain says NICE in draft guidance | Press and media | News | NICE

 

要するに、

 

「論文調べたんやけど、鍼(はり)が坐骨神経痛や腰痛に効くちゅう科学的根拠はないから推奨はできん。代わりに日常的な運動を採り入れてや。ストレッチとかエアロビとか、ヨガもええわな。」

 

ということだそうで。

 

翻り、日本では

上記資料によればイギリスでの鍼灸治療従事者は高々9,000人とのこと。

 

日本の「あはき三師」は、それぞれ10万人の免許登録者数が存在します(それぞれ重複あり)。

 

年度別登録者数 - 東洋療法研修試験財団

 

街中をよくよく見渡してみれば、この超高齢化社会を反映してか、至る所に鍼灸整骨院、鍼灸院は存在しているわけで、市場規模で言えば英国の比ではありません。

 

だからかどうかは知りませんが、日本では鍼灸などの効果についてはあまり語られません。国家資格を有する鍼灸師が保険適用のある療法を厚生労働省の監督の下、業として行っている。それが「科学的根拠がない」となれば、これまでの歴史や、保険適用の正当性は根底から覆されてしまいます。

 

まぁそれでも、英国の機関が調査したら「科学的根拠なし」と判断された事柄を日本の機関が調査すれば「科学的根拠あり」と判断されるとすれば、“科学”とは、“科学的”とは一体何なのかという哲学的混迷に入り込むしかなくなるでしょう。

 

「根拠なし」と「根拠あり」は科学的に見れば決して対称ではなく、「根拠あり」を主張するのであれば、いついかなる場合でもそれを証明するデータを提示できなければなりません。

 

しかし、それでも。

 

恐らくは日本中の誰も科学的な根拠を有さない鍼灸を否定することなどできないでしょう。

 

Too big to fail(大きすぎて潰せない).

 

しかも、かつて効果が無いとして承認取り消しとなった医薬品の例では損をするのが専ら製薬企業という大きな企業体であったのに対し、あはき師は個人経営の療養院などが多く、鍼灸の否定は一人一人の生活をモロに直撃してしまいます。

 

Too small to fail(小さすぎて潰せない).

 

もちろん自由診療として健康保険と関わりのないところで続けても良いかもしれませんが、台頭するリフレクソロジーや簡易マッサージなどと渡り合うのは容易ではありません。

 

特定の誰か(この場合ではあはき師)が損をするよりは、保険者(ひいては保険料を負担する多数の個人)を損させておけ、という逃げの発想はいつかどこかで破綻するのでしょう。

 

セルフお灸でも据えながら、気長にその時を待ちますか。

 

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逆に、鍼灸師にとっては今後も日本で活動できる可能性は高く、上手くすれば鍼灸院経営を軌道に乗せることができるでしょう。

 

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