『君の名は。』が村上春樹氏の「巫女理論」を忠実に再現しすぎている件について
以下、ネタバレにつき。
『君の名は。』を鑑賞中、三葉(主人公の女の子)が「巫女」だと分かった瞬間。
あぁこの子は「この世ならざる者」を媒介するのやな、と気付いた。
だってそれが、村上春樹氏の教えだったのだから。
新海誠監督は村上ファン
というわけで調べてみると、やっぱり同じことを考えていた人がおられまして。
『君の名は。』で「村上春樹」を想起する人は結構おられますね。上記は肯定的に、下記は否定的に想起しているようです。
そう、何を隠そう新海監督は村上春樹フリーク。
ただ、相思相愛の関係というわけではなく、村上さんはアニメを見ない旨の発言か記述があったと記憶してます。
その記載当時はおそらく「アニメ」と大括りに表現しつつジブリ映画をメインに想定していたものと思われますが、恐らくは『君の名は。』もその範疇に入ってしまうため観られることはないのでしょう。
村上さんの巫女フリーク
さて冒頭で触れた通り、「巫女(みこ)」という存在、あるいは機能は特に近年の村上作品に頻出し何度も繰り返し語られる超重要テーマであるわけです。
と、そう断言できるのもご本人がインタビューで明確に語っておられるから。
このインタビュー集には一体何度「巫女」という言葉が使われたことでしょう…。
「この世ならざるもの」がナチュラルに存在できる物語世界というか物語理論というか、とにかく「物語」を語る上で外すことのできない存在がこの「巫女」であると仰ってますね。
それも、何度も。
そう思って『君の名は。』をみてみると、なんと巫女役の三葉は「あの世」と「この世」を行き来するその機能を忠実に体現し、また瀧(主人公の男の子)を導き、物語を推し進める原動力ともなっています。
ハルキ理論をなぞるかのごとくに。
道尾秀介氏の小説にも
村上春樹フリークの新海誠監督に加え、影響を受けたのだかどうだかわかりませんが道尾秀介さんの小説にも「巫女」が出てきます。
やっぱり舞うんですよね。巫女的に、巫女として。
『君の名は。』では大いに話題となった口噛み酒は出て来ないですが。
巫女そのものが登場するものを日本の文学作品から探せばもっとあるでしょうし、どちらかといえば日本人の神性、心性に関わる物語の軸として「巫女」なるものが受け継がれてきたとも考えられるので、村上春樹さんを出所とするのはおそらく誤りでしょう。
あの「卑弥呼」だって平仮名で読めば「ひみこ」、書き方バリエーションとしては「日巫女」ともされているので、「巫女」は当時から「あの世と通じる人」みたいな存在として捉え続けているのだろうと思われるわけです。
まぁ、新海監督の件については村上さん直系の影響が大きい気がしました。
根拠は「新海監督が村上春樹フリークである」というネット上の発言録以外にないのだけれど、それでも。
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性別、生死、時間的前後関係をすっ飛ばす『君の名は。』の入れ替わりは、ある意味で村上作品の象徴的な「かべ抜け」の変奏と言えなくもない気がしてきたな。