アイデアの甕

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重症喘息患者に対する「Benralizumab(ベンラリズマブ)」に良好な試験結果…だが強力なプラシーボ効果も

新・現代免疫物語 「抗体医薬」と「自然免疫」の驚異 (ブルーバックス)

 

抗体医薬という医薬品ジャンルが隆盛を極めるだろう…と予測されたのも10年以上前のことでしょうか。

 

医薬品の名前に「マブ(mab)」がついもの、それが抗体医薬(分子標的薬)です。

 

yakugoro.com

 

生体内物質&生体内の特異的反応を利用できるという理論的優位性から、医薬品開発に革新および確変をもたらすとされていましたが、未だ、当初の期待に沿うことはできていない…はず。

 

重症ぜんそく患者に対する「Benralizumab」もまた、抗体医薬です。はてさて…。

 

 重症喘息、しかも薬剤制御不可患者

重症のぜんそく症状を示す患者さんの中には、気管支拡張薬やステロイド薬によって症状を軽快させることの難しいコントロール不良の方がおられます。

 

薬で治まらない喘息の発作は死の恐怖を伴うため、QOLも低下しがち。こうした重症かつ制御不可の患者さんに対する新規医薬品は熱望されています。

 

以前記事にした「Fevipiprant」も、そうした重症かつコントロール不良患者さんに対する新規医薬品候補。

 

bukki.hatenablog.com

 

 

 「Fevipiprant」は昔ながらの低分子化合物でしたが、今回臨床試験の結果が公表された「Benralizumab(ベンラリズマブ)」は冒頭で述べた通りの抗体医薬品です。

 

アストラゼネカ、協和発酵キリン

英国アストラゼネカ社が欧米で開発中の「Benralizumab」。そもそもは抗体医薬品業界の雄、協和発酵キリン(の子会社)が創出したようで。

 

Benralizumabについて

Benralizumab は協和発酵キリン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:花井 陳雄、以下「協和発酵キリン」)の完全出資子会社であるBioWa社から導入された製品です。独占的ライセンス契約のもと、協和発酵キリンとBioWa社が一部のアジア諸国におけるBenralizumabの独占的開発・商業化の権利を保持し、アストラゼネカは欧米を含めたその他すべての地域におけるBenralizumabの独占的権利を保持しています。BioWa社はアストラゼネカよりこれらの地域におけるBenralizumabの開発・商業化に関連したマイルストーンおよびロイヤリティの支払いを受ける権利を有しています。

 

 

http://www.astrazeneca.co.jp/media/pressrelease/Article/20160519

 

日本でも2014年から治験が行われています。

 

www.kyowa-kirin.co.jp

 

喘息だけじゃなく、2015年にはCOPDに対しても。

 

www.kyowa-kirin.co.jp

 

2016年に出てきた結果が、アストラゼネカ社が欧米で行っていた臨床試験結果。

 

http://www.kyowa-kirin.co.jp/news_releases/2016/pdf/20160517_01.pdf

 

作用機序、標的分子

抗体医薬は「分子標的薬」とも呼ばれるように、生体内のある分子だけに(特異的に)くっ付いてその機能を阻害することが期待されています。

 

「Benralizumab」は、

 

インターロイキン‐5受容体αサブユニットに対するヒト化モノクローナル抗体であり、喘息や喘息増悪に関与が強いとされる好酸球をADCC活性により速やかに除去します。

 (出典:協和発酵キリン - 2014年4月16日 - 喘息を対象としたBenralizumab(KHK4563)の第3相臨床試験を日本で開始

 

だそうで、読む人が読めばなんのこっちゃわかるものになってます。

 

だが、プラシーボ効果も

The Lancetに掲載された論文は以下2点。

 

Efficacy and safety of benralizumab for patients with severe asthma uncontrolled with high-dosage inhaled corticosteroids and long-acting β2-agonists (SIROCCO): a randomised, multicentre, placebo-controlled phase 3 trial

 

Benralizumab, an anti-interleukin-5 receptor α monoclonal antibody, as add-on treatment for patients with severe, uncontrolled, eosinophilic asthma (CALIMA): a randomised, double-blind, placebo-controlled phase 3 trial

 

ただ、今回の海外における試験結果では、担当した研究者が特筆すべき事項として以下のようなことも述べた、と下記記事。

 

ajp.com.au

 

曰く。

 

The authors note both trials indicate a strong placebo effect, as rates of exacerbations decreased significantly in the placebo group who had an injection, but did not receive the drug.

 

「著者らは両試験が強力なプラシーボ効果を示していると記載しています。皮下への注射は行いつつも薬剤は含んでいなかったプラシーボ・グループにおいても、有意に増悪率が低下したように」

 

抗体が無くっても、注射してそれが効くと思い込めば、“重症”のぜんそく患者さんが楽になる可能性もある。偽薬、おそるべし。

 

興味があれば。

 

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