マインドフルネス瞑想の鎮痛効果はプラシーボ効果を超え、モルヒネ(オピオイド)の代替療法となるか?
マインドフルネス流行の昨今。ストレス解消からダイエット、生産性向上はもとより、その“医療的”効果が注目されています。
かのインターネット検索最大手、超優良企業として名高いGoogle社が積極的に採り入れている宣伝効果抜群のという話も相まって、拡大の勢いは留まることを知らないのかどうなのか(適当)。
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「マインドフルネス(Mindfulness)」が“意識の有り様”を示す言葉なら、「マインドフルネス瞑想(めいそう、Mindfulness Meditation)」は“その具体的行為”と言う訳で、マインドフルネス瞑想には大きな期待が寄せられているところでもあります。
「マインドフリネス?なんだそりゃ??、聞いたことねーや」
とお思いの方は以下の記事をご一読ください。
全ての療法はプラシーボ効果を超えたがる
さて、我々が済むこの因果な世界には、それでも因果の権化たる科学的説明を拒む現象が散見されます。
プラシーボ効果もその一つ(プラセボ効果とか偽薬効果とも言いますが)。
簡単に言うと、薬効成分を含まない偽薬でも、効くと思い込めば効いてしまうという不思議なアレですね。
で、とかく怪しげなサプリメントや医薬品や医療風行為は「それは単なるプラシーボ効果である」という(真っ当な)批判をかわすため、積極的にこのプラシーボ効果を超えて行こうと頑張っています。
マインドフルネス瞑想の痛み抑制効果
マインドフルネス瞑想においても事情は同様で、ある種の通過儀礼としてプラシーボ効果を越えて行こうとします。
Mindfulness Meditation Uses Distinct Neural Pathways To Reduce Pain Better Than Placebo
上記記事(英語)に示された科学論文
ここで、鎮痛効果が科学的に研究されます(右手に49℃の棒を当てる際の痛みについて…を真面目に調べている図を想像すると尚面白い)。
曰く、
「プラシーボでも鎮痛効果はあるし、典型的な痛み関連脳部位の活動抑制も観察できんだわ。でもマインドフルネス瞑想ではよ、それとは異なる広域の高次脳領域が活性化されてるんや!」
「つまり、マインドフルネス瞑想はプラシーボ効果ではない真の効果として鎮痛効果を有するってわけよ!」
みたいな。
さらに、論文著者らは最近(2016年)になって新たな論文を発表します。
Mindfulness-Meditation-Based Pain Relief Is Not Mediated by Endogenous Opioids
「さっきは、“広域の高次脳領域”って言うてたんやけど、それって天然鎮痛剤のオピオイドと関連あるかもしれへんやん?でも調べてみたらそうやなかってん!内因性オピオイドに拮抗するナロキソンちゅう薬剤入れても、マインドフルネス瞑想の鎮痛効果は減弱されへんかってんや!」
「てことはやで、てことは、マインドフルネス瞑想が痛みを抑制するのにオピオイド経路は関係ないわけや!」
もちろん「!」を多用する科学論文はないわけで、意訳なわけですけれども。
でも、この興奮は何故なのかと言えば。
痛み制御の限界点
そう、慢性疼痛患者、特に末期がん患者で終末期医療を受けている人の中には、オピオイド受容体に作用する鎮痛剤(モルヒネ)に耐性ができる人、もしくはきっつい便秘など特有の副作用がひどくて続けられない人などがおられるわけです。
終末期医療において「ペイン・クリニック」に代表されるように症状としての“痛み”を抑えることに特化した治療法を選択する場合があるのですが、モルヒネと言えばもうこれは実質上アレなわけです。
最終兵器。
しかし、最終兵器の効果も減弱し使用不可となる場合などには「打つ手なし」という医療の敗北宣言となってしまいます。
ところが、マインドフルネス瞑想というその実技を採用することができれば、若干の光明を見出すことができるでしょう。
徐々に増量されるモルヒネ。ある程度を超えたらモルヒネに頼らず、マインドフルネス瞑想を実践する。
そうしたことが実際に行われてもおかしくありません。だって、痛み抑制経路が脳細胞レベルで違うのだから。そうであれば、単純な足し算が可能だと考えられるから。
もちろん、末期がんとなりモルヒネで痛みをコントロールしながら新しいことを始めようとする(マインドフルネス瞑想を習う、など)が難しいことも考えられるため、ここは一つ、健康な体でもって取り組んでみるのが良いのかもしれません。
Googleに倣う必要もないけれど。それが人生にとって有益であるならば。
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