FAXDM(ファックス・ダイレクトメール)やるなら今のうち!【2016特定商取引法改正】
FAXは遺物ですか?
いいえ、2016(平成28)年現在でも現役で活用されています。
しかし、そろそろ息の根が止まりそうですね。特定商取引法の改正によって。
企業内で生き残るFAX
電子メールが十数年前に一般に普及し今では誰もがスマホを持ち歩く時代にFAXが活用されているなんて信じられないという方もおられるかもしれませんが、そこそこ歴史のある企業にお勤めの方なら、注文はFAXで行うという場面が未だ残っていると思います。
そういや最近観たWOWOW版の『下町ロケット』でも、訴訟合戦の相手先企業が弁護士とのやりとりの際に
先生にすぐFAX送れ!
とか何とか言ってたような。
数年前に訊いた話では、某金融機関においてはFAX送信という“一大事”にゼッタイに送信先を間違えたくないがために「FAX送信は2人で確認しあいながら行う」そうで。
実際、FAX送信ミスというのは非常にありがちながら致命的なリスクを背負ってます。まぁメールでもそうでしょうが。それはさておき。
その他その他小さな企業から大きな企業まで、企業体であればFAX番号を取り敢えず用意して、まぁ新規顧客の取りこぼしに備えようという基調は未だ健在であるように思われます。
最近ではクラウドFAX的な、パソコンやスマートフォン上のデータファイルをクラウドに送信すれば登録先のFAX番号へ送信してくれるサービスなんかもあったりして未だ意気軒昂な分野だと言えるのかもしれません。
FAX的価値=圧倒的エモさ
FAXがなぜ未だ生き残っているのか、その最も大きな理由は「紙媒体」であることに尽きるかと。
紙。
目に見え、手に取って触れることができ、また保存可能な紙。
人間の認知能力は抽象的なデータよりも具象的なモノを重視するように進化してきたため、紙媒体で送られてくるFAXには何がしかの“確かなモノ”としての安心感が附随しているような気がします。
もちろん連絡の本質的な価値は伝達される情報そのものだとしても、FAXはそれを媒介するメディアとして圧倒的にエモい(エモーショナルな、感覚的な)媒体であるのは間違いありません(とはいえ、最近ではクラウドで送信し、クラウドで受信されるFAXも多くなりエモさから乖離しつつありますが)。
ちなみに、「エモい」は新進気鋭のメディアアーティスト・落合陽一さんが好んで使う用語です。
FAXを用いたマーケティング
そして何より、古くからある通信手段として確固たる地位を気付いてきたFAXは、現代では複合機としてコピー機能やスキャナー機能と共に提供されているがために、社内銀座ことオフィス一等地、すなわち中心部もしくはデスクのお誕生日席に配置されることもしばしば。
社内の中枢に、FAX機(複合機)が鎮座まします。
この事態は上記の紙媒体的エモさ加減と相俟って、ある種の有用性を外部に提供してきました。
そう、企業間取引のダイレクト・マーケティングに盛大に用いられているのでした。
広告の要素としてインプレッション(目に触れる機会)はとても重要で、FAXで送ってしまえばそのまま企業の中枢にある種のエモさを伴って配布され、どうしても目についてしまうという機会を創出します。
また、ピーヒョロロロ…という特徴的な聴覚刺激も脳をガツンと刺激して注意を引いてくれます。
まさにうってつけ。
特に(闇)金融業者なんかは新規の顧客開拓で電話をかけまくる、というのが『ナニワ金融道』でも描かれた伝統的新人教育手法なのですが、いまでは対象企業リストを買ってFAXを数万件単位で一気に送り付け、反応があった極々少数の相手にセールスを仕掛けるという手法が広く使われているようです。
小さい企業なら社長が直接FAX用紙を目にするかもしれず、時に資金繰りに困っているなどすれば魅力的な金利等融資条件に惹かれて思わず電話を…という人がいるんですね。
しかし、この手法も近々使えなくなってしまいます。
迷惑FAX
郵送されてくるダイレクトメール(DM)のウザさもそこそこですが、たまに凝りに凝った素敵なDMが送られてきて思わず保存することも。
しかし、大抵の場合には不要なもの。
これがFAXでのDMになるとどうしてもデザイン等手の入れ方は適当で、インクを勝手に使われた怒りもあって非常な不快感を催させる場合があります。
FAXが紙媒体=エモいことの価値を書きましたが、それは逆に不快感をも増大させるリスクを伴っています。
FAX送信代行業者
こうした機会を抜け目なく見出す事業者の中には、大規模に回線契約をすることで最低送信量を確保し送信料を通常より安く提供できるFAX送信代行業を営む者も。
1枚当たり数円の料金で、数万枚~数百万枚/日を送信して利益を出す手法。
大概は自動化されたシステムで、ブラウザ上からCSVファイルなんかで送信先FAX番号データを送れば指定時間に指定文書ファイルを一斉送信してくれます。中には送信先データも1件いくらで販売しているところもあったりして、薄利多売を地で行く手法は中々洗練もされているようですね。
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この記事を書くきっかけになったFAXも、調べてみると代行業者からの送信だったようで。なかなか辛辣な書き込みに満ちていました。
ただ、もうすぐ息絶えるのではないかと。
特定商取引法改正
実は、平成28年6月に特定商取引法が改正&公布されています。(参照:特定商取引法の改正について|消費者庁)
リンク先の資料によれば、「○施行期日は公布日から1年6月以内」とのことで、平成30年からは確実に改正内容が施行されることになるようで。
どんな内容だったか?
これまた先の資料から一部を引用。
○通信販売におけるファクシミリ広告への規制の導入(電子メール広告における規制の拡充)
・ファクシミリ広告を請求等していない消費者に対するファクシミリ広告の提供を禁止する(オプトイン規制)。
要するに、メールと同じく、送信相手の承諾なしに勝手に通販用のファックス広告を送るとダメですよということのようです(参照:通信販売|特定商取引法ガイド)。
まぁ、ファクシミリ広告への規制の導入は当該改正内容の紹介においては「その他」として扱われるほど小さなもののようですが、これまで迷惑FAXに応対させられてきた人にとっては朗報であったようですね。
FAXDMの未来予想図
消費者保護の観点から、FAXDMなど元々が無理筋の営業手法は営業的にも法的にも益々苦しくなってくるようで。
とは言え、2016年現在でも既に特定商取引法で規制されてきた電話勧誘や訪問販売の問題がなくなったかと言えばさにあらず。
特定商取引法ガイドをみれば、月に数件は訪問販売業者が行政処分を受けているようです。
しかし、訪販がある意味では直接的取引としてやりやすいがために無くならない(=行政処分が引き続く)のと比較して、FAXDMに関してはFAX送信代行業者の存在が前提となっているところがあるために継続困難なのではないかと。
たとえば1件当たり5円の送信費用を見込んだ事業計画を立てていたとして、これが通常料金の1件8円になってしまうと事業計画の根本が破綻してしまうため、業者を介さないFAX送信は新規顧客開拓策として不適になってしまうためです。
代行業者は代行業者で法令違反のお手伝いはしたくないでしょうし。
抜け穴は見つかるのか。それともFAXDMは消失してしまうのか。
少なくとも、今現在マーケティング手法としてFAXDMに頼っている事業者(特に士業関係に多い?)さん&FAX代行事業者さんは別口の平成29年の年末までに解決策を見出しておかないと、正月を迎えられなくなるかもしれません。
良いお年を。
追記(2016.12.29)
面白い記事を発見。FAXDMに活路を見出し、そして挫折した男の昔語り。
この方のように会社インデックスからFAX番号を引いてくることも、遅くとも平成30(2018)年からは違法になりますね。