ニセの煙草にはニコチンがない、と信じるだけで脳の反応が違ってくる逆プラシーボ効果なお話
喫煙常習者にとってのタバコ。リラックスアイテムとして有用だと信じるその効果のほどは「思い込み」によって左右されるかもしれない、という研究結果が。
上記記事で紹介された論文はこちら。
「ニセモノだよ(ニコチンゼロだよ)」と偽って「本物の(ニコチン入りの)タバコ」を吸わせるという、倫理的にちょっとどうなのかという研究。でも、結果としては面白いものになったそうな。
思い込みの効果は凄い
ホメオパシーの理論に懐疑的な人、もっといえば嫌悪感を抱いている人でも、ことプラシーボ効果に関しては大抵認めています。最近ではプラシーボ効果に関する脳科学的な研究も盛んで、脳の働きをリアルタイムに視覚化できる装置を使った成果がバンバン報告されています。
さぁ、ではスモーカーが、ニセモノだと信じて本物のタバコを吸った時、彼ら彼女らの脳みそはどう反応するか?
偽物だと言われた時(“told no nicotine”)、本物だと言われた時(“told nicotine”)で脳の働きを比較した結果がこちら。ちなみに「placebo」は「de-nicotinized(脱ニコチン化)」されたタバコだそうです。
引用:http://journal.frontiersin.org/article/10.3389/fpsyt.2016.00126/full
下二つの画像を比較してみれば、同じタバコ(ニコチン入り)を吸ったにもかかわらず、脳の活動には差異がみられました。これは「ニコチンが入っている」か「ニコチンが入っていない」かという示唆の違いによって生み出された効果だとみることができるでしょう。
効かないと思い込めば、ニコチンによって発生していたはずの脳部位の活性化(?)が見られなくなる。こういった知見がアディクション、依存症治療へ応用できるかもってことで期待されていたりします。
また医薬品の効きが悪いというか、薬理学的な作用機序がハッキリしている(はずの)薬でも“多くの人に効かない”場合があるのはどうしてかという謎に迫ることができるかもしれないとも。
「何故この薬が効かないのか?」
「それは、効くと信じていないからだ。」
現代医療は科学と手を組み大きな成果を上げていますが、結局のところ宗教に行きつくかもしれない。宗教家も医師も「信じよ」と同じ言葉を同じ目的で使いだすそんな日が来るのだろうか。
逆にこれ、画像の右二つを比較すれば言辞的示唆によるプラシーボ効果はニコチンそのものの効果を脳科学的には再現できていないわけで、ニコチンにしか生み出すことのできない真の生理学的・薬理学的効果があるのかもしれない。